水中で指がしわしわになる理由

最近は台風による大雨が何かと話題になっていますね。

大雨による被害はもちろん、ずぶ濡れで帰宅することになることもあり、体調管理にも気を付けたいところです。

 

ところで、ある程度の時間、手が水に触れていると、指がしわしわになる現象がありますよね。私は長年、水でふやけたのかと思っていましたが、これはもっと深い理由があったようです。実は、水面下の物体をしっかりとつかみ取りやすくするための進化上の利点なのでした。

 

研究者の間でも、指がしわしわになる現象は、指先の皮膚の外側部分が膨張するためだと長らく考えられていましたが、近年の研究で浸水に対する神経系の反応であることが発表されました。ただ、その目的についてはしばらくは謎のままでした。

そこで、理由を解明するために、イギリスの大学が、しわしわの指でどんな利便性が生じるのかを実験しました。親指と人差し指だけを使い、濡れたガラス玉と魚釣り用の鉛を、別の容器に移し替えるという実験です。その結果、指をぬるま湯に30分間浸していたグループの方が、はるかに速く作業を行うことが出来たそうです。

 

つまり、指がしわしわになるのは、濡れた環境下で物をつかみやすくする機能を持ち、かつ機動性を高めるための進化的適応だった「かもしれない」ということです。まだまだ謎の部分が多いので解明には時間がかかるようです。

そして、しわしわの指は乾燥した物体をつかむ際にも悪い影響を与えることがなかったことから、新たな疑問が浮上します。「何故われわれの指が永続的にしわしわの状態ではないのか」ということです。これは、しわしわの指には指先の感度を鈍感にしてしまうという「代償」もあることが指摘されています。

 

2003年4月にヒトゲノムの解読が完了し、人の構造などはほとんど解明されたような印象を受けますが、まだまだ我々の知らない機能が発見されるのは面白いですね。これからも新しい発見で私達を驚かせてくれることでしょう。